Smiley face
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リヤカーを引く濱野怜さん(右)と神領龍生さん=2024年9月5日午後7時50分、川崎市川崎区、佐藤英法撮影

 木曜日の夜。炊飯器を積んだリヤカーを引いて繁華街を抜けていく。ホームレスの人たちの寝床をたずねては、温かいおむすびをにぎって手渡す。

 川崎市幸区の法科大学院生、濱野怜さん(24)が代表を務めるホームレス支援団体「CoE(コエ)」(川崎市川崎区)は20代の若者が中心だ。SNSで活動の輪が広がっている。その活動に記者が同行した。

 この日は午後7時半ごろJR川崎駅前を出発した。副代表の神領龍生さん(22)と一緒にリヤカーを引いて市教育文化会館前(川崎市川崎区)に到着すると、7人ほどが腰を下ろしていた。

 リヤカーに積まれた炊飯器はポータブル電源につながっている。「人と人をむすびつける」。そんな思いを込めて、濱野さんはおむすびをにぎり、みそ汁、総菜を添えて渡す。その場でにぎるのは、温かいうえに、小さめ、のりは付けないなど臨機応変に対応できるからだ。

 受け取った男性はかつて各地の労働者の宿泊所を回っていたという。川崎に来て25年ほど。「(濱野さんは)いい男だ」と笑顔で話した。

 公園に移ると、多摩川河川敷を寝床にする男性に「台風はどうでした」と話しかけた。男性は「あと10センチ、(水位が)上がれば浸水していた」。

 一人ひとりと時間をとって向き合い、親しい人とはグータッチをして別れる。無理に踏み込むことはしないが、受け入れる姿勢は常に示し続ける。「対等に、一緒に笑う」のが濱野さんの流儀だ。

 団体名の「CoE」は「共存」を意味する「coexistence」から取った。「人は千差万別。違うからこそ共存し、助け合う必要がある」という。

心に刺さった3年前の夜の言葉

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